大学案内

平成22年度入学式式辞

2010年4月6日

はじめに

理事長・学長 奥野武俊

 本日ここに、多くのご来賓、教職員、ご家族をはじめ関係の皆様のご臨席のもとに、2010年度の入学式を挙行できますことを、心から感謝しつつ、式辞を申し上げます。大阪府立大学に入学された、学部生1,526名、大学院生739名、合計2,265名の皆さん、おめでとうございます。本学を代表して、みなさんを歓迎し、この日を心待ちにしてこられたご家族をはじめとする関係の皆さまに、心からお祝い申しあげます。

 昨年は、何度も本学がマスコミに取り上げられ、何かとご心配をかけたことと思います。まずこのことに触れなければならないと思いますが、そのようななか、皆さんが大阪府立大学を選び、本学のメンバーになってくださったことを心から感謝します。ご存じのように、本学は改革するための準備を現在行っており、数年後には新しくなる予定です。せっかく入学が決まったけれど、自分の学部はこれからどうなるのか? などの問合せをいただいたりしておりますが、今年度入学された皆さんには、現在の7つの学部・研究科で学び、研究していただける体制を保障しますので、ご安心ください。本日から、我々と一緒に、皆さんの大学生活を、豊かで充実したものとなるようにがんばって行きましょう。

本学の歴史と交流の拠点

 さて、大阪府立大学は、第二次世界大戦の後に作られた新制大学のひとつとして、1949年(昭和24年)に発足したことは、受験雑誌などにも書かれておりますので、ご存じのことと思いますが、実は、本学の源流をたどって行きますと、1883年(明治16年)にまで遡れることが分かりました。この年には、多くのものを西洋化することで富国強兵の道を歩んでいた明治政府によって陸軍学校が開設されたのですが、軍隊で使う馬(軍馬)を育てる獣医を養成するために、獣医学講習所が大阪に開設されました。

 これが、本学の歴史の原点になりました。この時から数えて、今年で127年目、3年後の2013年には130年目を迎えることになっています。これを“創基130年”と呼び、中百舌鳥キャンパスの2つの門に案内板が掲げられていますので、すでにご覧になったかたも多いと思います。

 本学のメインキャンパスは、堺市の百舌鳥古墳群と呼ばれている一帯にあります。“百舌鳥”はもちろん鳥の名前で、大阪府や堺市のシンボル鳥となっています。日本書紀によりますと、その昔、この地で古墳の工事中に飛びこんできた鹿が倒れたので、調べてみると、その耳から百舌鳥が飛び立ったそうで、ここを“百舌鳥耳原”と名付けたと書かれてあります。また、看護学部と総合リハビリテーション学部のある羽曳野という名称も、やはり日本書紀に出てきまして、日本武尊(やまとたけるのみこと)が、白鳥になって羽を曳くがごとく飛び去った場所と言われています。キャンパスがあるこれらの場所は、私たちに歴史ロマンを感じさせてくれるところです。

 この2つのキャンパスに、昨年、獣医学科の“りんくうキャンパス”が加わりましたが、この3つの場所に共通していることは、多くの人が集まる「交流の拠点」ということです。“りんくう”キャンパスは関西国際空港の近くにありますので、様々な国から多くの人を迎える場所になっていることは言うまでもありません。また、“なかもず”のある堺市は、英語のBoundaryを意味する、さかい目の「境」と書かれ、河内、和泉、摂津などの国境を意味し、街道の接点でしたから、いわゆるInterchange(インターチェンジ)と言ってもよいかもしれません。多くの人がここで出会い、交流し、経済が発達しました。堺は、かつては町民の自治による「自由都市」として栄え、「ものの始まりみな堺」と言われるほど、新しいものを取り入れる力にあふれており、三味線、小唄、金魚、線香などは堺市から広がっていたことで有名です。

 様々なところから新しい情報が入ってくると、そこで交流がさかんになり、街は活気にあふれます。それは、異文化の混じり合う多様性の高いところで、文化や文明が生み出されることを意味しています。世界史のなかでは、ギリシャ時代やローマ時代の地中海が、当時の世界文化の発信地になっていたことを学んだことでしょう。ブローデルという歴史学者がその仕組みを明らかにしたことで有名です。そのようなところでは、衝突や対立も起こりますが、それだけに新しいものを作り出す力が強くなり、大きく成長することができるのです。本学では、このようなスピリットを継承しておりますので、多様性の高い環境を積極的に作り出す努力をしていますが、その中から2つを紹介します。

多様性を高くする試み

 ひとつは、国際交流を進めることです。最近は、中国を始めとして、ベトナム、インドネシアなどアジアの各国や、フランス、ドイツなどヨーロッパの国からも、約200名近くの留学生を迎えるようになっており、本学からはアメリカ、オーストラリア、韓国などに短期留学する学生が増えております。なかには長期留学して、日本とフランスやドイツで同時に学位を取る、いわゆるダブルディグリーに挑戦する学生もいます。外国のかたのとの交流は、異文化体験をするとてもよい機会と考えて、学内には、イングリッシュ・カフェという、会話は英語だけで行われる場所も作っています。ぜひ英語によるコミュニケーション力をアップして、国際交流にチャレンジして、くださるようにお願いします。大学の国際交流をより豊かに推進したいと思います。

 もうひとつは、学部や、研究分野を越えた交流を深めることです。多様性の高い環境での交流は外国人とだけでなく、学びの場を広げることでも実現できます。これは本学の大きな特徴とも言えることです。実は、この4月から環境問題を幅広く学ぶ「環境学副専攻」をスタートさせますが、これは、環境を学ぶためには、理系から文系に至る幅広い学問を修得する必要があると考えて、学内外の様々な研究分野の先生がたにお願いして集まっていただき、多様性の高い状況を作り出しています。このような学びによって、従来からの研究分野を超えたところでの交流を体験できると思います。

 このような、多様性の高いところで交流を深め、成長するために大切なことをお話ししたいと思います。

ディベートからダイアログへ

 みなさんは、ディベートの経験があることでしょう。何かの課題を設定して、それについて賛成するか、反対するかの態度を決めて、論理的に相手を説得するようにする討論会のことです。テレビではこの手法を使ったゲーム感覚のものが、よく放映されており、小学校の授業でもこのような手法が取り入れられているようですから、きっと親しみ深いのではないかと思います。昔から日本人は、自分の考えを論理的に述べることが下手と言われてきましたが、最近の学生が、自分の考えを主張することが、とても上手なのは、多くの方がディベートを経験しているからだと思います。

 このディベートでは、原則として自分の考えを主張して相手を説得するわけですから、討論の途中で、自分の考えを変更することはありません。もし変更してしまえば、討論が続かなくなりますから、とにかく自分の意見を主張し続けなければなりません。

 相手の主張を聞いて、「なるほど」そのような考えもある…と思っても、それを口にするとゲームオーバーになりますから言いません。話を論理的に進める手法として、このディベートは非常に役に立つものですが、もし、コミュニケーションの手法として、自分の意見を主張するという意味で、ディベートしか知らないとすれば、さきほどお話した「交流」は成り立ちません。ただ単に自己主張するだけでは、成長しないのです。

 例えば、子供がアイスクリームを食べたくて、おねだりした時に、お母さんが、冷たいものを食べ過ぎだから…とか、いま食べると夕食が食べられなくなる…などを考えて「ダメ」と言ったとしましょう。ても、子どもは、その言葉を聞かずに、ただ泣き叫んで、「アイスクリームが食べたい」といつまでも言い続けると、ただの“わがまま”になります。つまり、単なる自己主張だけならば、たとえお互いに意見を述べ合ったとしても、考えかたを共有することはできません。表現はあまりよくありませんが、このような自己主張しかできない人を「子ども」と呼ぶことにしましょう。

 これに対して、相手の話を聞いて、自分の考えを変える事ができれば…、話の途中で「なるほど、そのような考えもある」といって、それを受け止められるならば…、交流が深まって成長します。このようなコミュニケーション手法のことを、Dialog(ダイアログ)と呼びます。この場合は、意見のやり取りを会話のように行います。つまりお互いの考えを述べ合い、ぶつけ合いながらも、相手の主張に耳を傾け、それに納得できる場合には、自らの主張に固執せず、自分の考えかたを変えるのです。それをするためには、勇気が必要で、それができる人のことを、「大人」と呼びたいと思います。

 私は、学内のいろいろなところで、学生同士、学生と教員、職員と教員の間で、この「ダイアログ」が豊かになる大学でありたいと願っています。多様性の高い環境で、自分と考えや、育った環境の異なる人との交流活動によって生まれるものは、かならず知的創造の源になると思うのです。どうか、この「ダイアログ」を、あなたのキーワードにしてください。あなたのまわりの多くの方と交流を進め、希望や夢を膨らませていただきたいと思います。

おわりに

 本学は、「高度研究型大学 ―世界に翔(はばた)く地域の信頼拠点―」を大学の理念として掲げています。これは、高度な研究を行っている大学という意味はもちろんのこと、高度な専門知識を得ることだけでなく、自分で問題を見つけ、自分で考え、自分で結論を導くことを身につけて成長し、国際的にも活躍し、社会を牽引して行く人を育てることを意味しています。今日から始まる大学生活のなかで、あなた自身を成長させ、豊かな生活を送ってください。

 これからの大阪府立大学を創り上げていくために、あなたの協力が必要です。
活躍を期待して、式辞といたします。

学長  奥野 武俊