大学案内

平成21年度入学式式辞

2009年4月6日

 本日ここに、多くのご来賓、教職員、ご家族をはじめ関係の皆さまのご臨席のもと、2009年度の入学式を挙行できますことを、心から嬉しく思います。

 大阪府立大学に入学された、学部生1534名、大学院生645名の皆さん、おめでとうございます。皆さんは、今日から大阪府立大学の重要な構成メンバーです。本学を代表して心から歓迎して祝福します。また、この日を心待ちにしてこられたご家族の皆さまにも、お祝い申し上げます。

 皆さんは、受験するにあたって、大阪府立大学がどのような大学であるかをパンフレットやWEBサイトなどで調べられたことと思いますが、そこに掲載されていなかったことをいくつか紹介させていただきたいと思います。

 まず、本学の歴史についてです。ご存知のように、現在の大阪府立大学は平成17年(2005年)に府立の3つの大学が統合化されてできた新しい大学で、法人化された大学として今年は5年目を迎えます。

 その前身である浪速大学は昭和24年(1949年)第二次世界大戦の後に多く作られた新制大学のひとつとして発足しました。その時から数えますと今年で60年経過した大学ですが、本学のルーツを探ってみますと、明治16年(1883年)に開設された獣医学講習所に辿り着くことが分かりましたので、そこから数えると今年で126年の歴史をもつ大学です。

 誰でも、自分の誕生に関わるルーツをたどって、identityをはっきりさせると、自分を大切にして強く生きることができると言われていますが、大学も同じことです。

 大学の歩んできた道を深く知ることで、学問することの意味や動機付けを明確にすることができます。今日からあなたの学びの拠点になる大阪府立大学の歴史を知ることは、あなたのこれからの歩みにとって非常に重要です。なぜなら、歴史を知ることは単に過去のことを懐かしむものではなく、現在の立ち位置を確認し、未来の方向を定めるものだからです。

 本日皆さんに配付したOPUという冊子に、「府立大学のルーツを訪ねる」という記事を掲載しましたので、後ほどゆっくり読んでいただきたいと思います。本学の歴史を学ぶことを通して、我々の先人達が、かつては“自由都市”と呼ばれた堺にある公立大学を、我が国トップクラスの教育・研究拠点にするために高い志を持っていた姿に触れて、本日あなたが府立大学の一員になったことを誇りに思っていただけると確信します。

 次に、皆さんの先輩たちがどのように活躍してきたかについて少し紹介したいと思います。

 最近打ち上げられて話題になっている小型衛星「まいど1号」の設計や運用にあたって活躍した学生については、改めて説明する必要がないでしょう。

 また、毎年琵琶湖で行われてきた「鳥人間コンテスト」での連続優勝なども大きく報道されてきましたのでよく知っておられる方が多いと思いますが、ESS(英語会話)クラブが参加しているディベートの国内内外の大会でのめざましい活躍とか、韓国で行われた韓国語のスピーチコンテストで優秀賞を取ったことなどは、あまり知られていません。

 このような国際的な活動のなかで、多くの学生が活躍しているのですが、なかでも大阪府と姉妹関係にあるフランスのヴァルドワーズ県にある大学との交流が進んでいます。毎年多くの学生の交流が行われており、今年は、フランスから10名以上の学生が府立大学に来ることになっており、府立大学からは20名以上の学生がフランスに行きます。そのなかの数人は、日本とフランスの2つの大学で学位を同時に取る、ダブルディグリーに挑戦しています。

 また、韓国、中国、タイなどアジアにおける国々との盛んで、今年はベトナムの世界遺産のひとつになっているハロン湾の環境改善に取組むプロジェクトを教職員と学生が一緒になって進めることになっています。

 あなたもこのような活動に対する希望を明確にして、そのための学びを計画的にするならば、活躍の場を国際的なものにすることができます。ぜひ、それを目指していただきたいと思います。

 もうひとつ紹介したいことは、大学院に進んで活躍している先輩たちのことです。本学はすべての学部に大学院を設置した総合大学ですが、最近の大学院前期課程(修士課程)に進む学生は非常に多くなっています。学部での学びを終えると、さらに学問を深めたいと感じる学生が多くなっていますので、クラスの50~60%近くの人が大学院に進学する学科が多く、工学部には90%近くの人が進学する学科もあります。

 大学院へ進むことが当たりまえの時代になっているとも言えます。それは、研究と教育が一体となっている大学院では、高度な専門知識を得るためだけでなく、自分で問題を見つけ、自分で考え、自分で結論を導くことを身に着けるために非常に有効であるからです。その結果は、多くの大学院生が国際会議などの学会で研究成果を発表し、表彰を受けていることに表れています。昨年は実に100名以上の学生が様々な学術的な表彰を受けました。

 学部生の皆さんには、入学したばかりで少し早いように感じるかもしれませんが、ぜひ大学院で学ぶことを今から考えて下さい。そこで、あなたの知的な好奇心や学習意欲を満足させ、総合的な判断力と豊かな人間性を育て、社会に貢献できる人になっていただきたいと思います。

 また、本日から大学院へ進むことになっている皆さんには、それぞれの学問領域を深く追求し、創造的な研究を進めて、産業界や地域社会をリードする人になるとの志を高くもって、後輩たちの良き模範になっていただきたいと思います。そのような意気込みが、本学が理念として掲げている「高度研究型大学 ―世界に翔く地域の信頼拠点―」の実現につながりますので、皆さんの活躍に期待しています。

 さらに、本学は、この4月から、関西国際空港に近い“りんくう”キャンパスに新しい獣医学科を完成しました。ここでは動物に対する先端的な医療を提供し、感染症なども含めた高度な問題に関する研究を行い、そのための拠点を目指しています。

 私は、先日この新しいキャンパスを見てきましたが、ここから関西国際空港のまわりにひろがる海を見たとき、“アジアの先に広がる世界が見える”ように感じました。皆さんにも時間の都合をつけて訪れていただきたいと思います。大阪府立大学は、関西空港に最も近いところにありますので、ここで世界につながるゲートウェイを実感して、世界に翔く夢を広げてください。

 さて、ロンドン郊外にセント・クリストファーという病院があります。シシリー・ソンダース(Cicely Saunders)が世界中に近代的な考えのホスピス活動を広める拠点になった病院です。

 彼女はオックスフォード大学で哲学を学んでいた時に戦争が起きたため、ナイチンゲール看護学校で学んで看護師に転身しました。学びを終えて、最初に担当した患者はデービット・タマスという、がんの末期のかたでした。その時彼に残された時間は2カ月しかありませんでした。肉体の痛みと孤独、死への不安のなかで、安らぎを得るにはどうしたらいいのか、ふたりは話し合いながら、新しい医療が必要であることに気付きました。

 彼は、「窓のある病院を作ってほしい。僕はその窓になる」と言って亡くなりました。彼女は、彼との約束を守り1967年に新しい形のホスピスを作りました。そこに世界中から多くの人を迎えて交流をもち、そこをホスピス運動の源にしました。

 私は、この話を聞いた時に、大阪府立大学が世界の中で原点となるような働きをして、社会にとって無くてはならない大学となるために「窓のある大学」にしたいと思うようになりました。世界に翔く大学になるためには「窓」が必要だと思ったのです。

 このことを説明するために、“窓の無い家”を想像してみてください。そこには光も風も入りませんから、暗くて、息詰まる感じがするでしょう。でも、もし窓があれば、外の景色を楽しみ、新しい空気を取り入れ、外との接触ができて、新しい行動のエネルギーを生み出すことができます。外からの空気をいっぱいに入れ、しかも自分のことを広く知らせていく躍動的な大学のことを、「窓のある大学」と呼びたいと思います。

 これを実現するためには、自分と考えや好みの異なる人との様々な交流が必要です。その結果生まれる多様な空間が知的創造の基になるからです。それが大学です。

 繰り返しですが、大阪府立大学を「窓のある大学」にしたいのです。そしてあなたに、この窓を作る人になっていただきたいと思います。どうか、窓を作って外の風を入れる勇気をもってください。多くの人との様々な触れ合いを楽しみ、それを通して豊かに成長してください。

 大学で学問することを通して、大きく、強く、明るく成長し、輝いている人になっていただきたいと思います。それが、大阪府立大学におけるあなたのミッションです。

 今日から始まる大学生活を楽しみながら、充実した日を送って下さるように期待して、式辞といたします。

 

学長  奥野 武俊