大学案内

平成21年 年頭の挨拶

2009年1月5日

公立大学法人大阪府立大学の一層の発展を願って

理事長・学長 南努 年頭のあいさつ

理事長・学長 南努

 教職員の皆さま、明けましておめでとうございます。気持ちも新たに、ご家族の皆さまと新年を迎えられたことと存じます。
年頭に当たり、ひと言ごあいさつを申し上げます。

 こうして皆様の前で新年のご挨拶をさせていただくのも、今回でいよいよ最後となります。通算しますと、8回目になりますが、この機会に少し過去を振り返ることをお許しください。

 「小人の過つや、必ず文る(かざる)」ということが、論語に書かれているそうです。君子は誤りに気づくと、すぐに改めるが、小人は必ず言訳をするという意味だそうです。私もこの間、小過は言うまでもありませんが、多くの大過を犯してきたと思います。私はもとより小人ではありますが、ここで振り返るのは、そうした過ちを言訳するためでははく、次への発展を図る糧にしたいからです。

 それで、今日のテーマは、「公立大学法人 大阪府立大学の一層の発展を願って」ということにします。

 学長に就任して、まず第一に着手し、お願いしたことは、「科学研究費の獲得」に努めていただきたいということでした。就任したのは平成13年7月1日でしたが、その2ヵ月後の9月4日付で全教員に向けて第1報を発信しています。当時の科研費獲得額は5億円を少し出たところでした。ところが、平成18年度の段階で10億円を超しました。科研費の予算総額は平成13年度には、1,580億円、平成18年度は1,895億円で、総額の伸びが20%であるの対して、獲得額の伸びが2倍という結果は、各先生方がいかに頑張っておられるかということの何よりの証拠です。この間に3大学の統合ということがあって、少し統計の取り方に問題はありますが、教員定数の25%削減が進行しているにもかかわらず、いま申し上げた実績は、大いに強調してよいことと考えています。ただし、同規模の大学で、もっと多くの科学研究費を獲得している大学があることも忘れてはなりませんし、まだ5人に1人くらい、科研費の申請をしていない先生もいますから、まだまだ伸ばすことのできる余地があると思います。

 科研費も含めて、外部研究資金の増加が特筆に値することについては、何度も申し上げているので、今日は繰り返しを避けます。

 次の話題は、教育・研究環境の整備です。平成17年2月に物質棟(B-5棟)が竣工しました。平成4年に総合情報センター、いまの学術情報センターができ、平成6年に先端科学研究所の本館、いまのイノベーションセンターができて以来、実に10年のブランクがあってできた新しい建物です。この物質棟建設に当たっては、学内外に大変な犠牲を強いたことがあったことを十分認識する必要があり、そのことを認識した上で、本学の発展に寄与していただきたいと思います。平成7年7月に、当時平沙多賀男学長のもとで、「将来計画」が策定され、平成8年10月にその将来計画に基づき「キャンパスプラン基本計画」が策定されました。それが青写真となって実現した建物ですから、実に計画が10年越しに実現したことになります。当時工学部長として、これらの計画作成に参画したことを記憶しています。

 総合教育研究棟は、3大学が統合するに当たって、教育研究環境の整備とともに、統合の一つの象徴的な建物として、当時の設置者に強くお願して実現しました。

 さらに、平成14年7月に設置者から、バイオ関連研究機能のりんくうタウンへの移転の申し入れがありました。これを起点にして、学内外で大変な議論が交わされたことは、改めてお話しするまでもないと思います。平成18年2月府議会において、獣医系の移転が決定されました。それに伴って認められた予算で、りんくうキャンパス獣医学舎だけではなく、先端バイオ棟、サイエンス棟の建設が認められ、間もなく2月には竣工し、4月から供用を開始することになっています。

 これらの新しい建物の建設は、本学の教育研究環境の整備として、極めて重要な意味を持つと同時に、本学の教育、研究成果の飛躍的な向上に資するものと期待しています。

 ただ、キャンパス整備に関しては、この先が大変心配です。

 キャンパス整備の最後の話題として、少し余計な話をすることをお許しください。新しい建物を建てると、その建物に「定礎」という文字と、何年何月という文字を彫り込むことになっているようです。物質棟のときに、大きな筆で、大きな紙に四苦八苦しながら書きました。総合教育研究棟以降ではそのときのものを、年月だけを変えて使っています。四苦八苦しながら書いた下手な文字が、5つの建物に刻まれることになりました。私が死んでも残るなあと思っています。

 次に、産学官連携について述べます。

 平成18年2月に、「教育基本法」が改正されたことは、皆さんもご存知のことと思います。昭和22年に制定されて以来、約60年ぶりの改正ということになります。われわれにとって非常に重要な点は、第2章、第7条に「大学」という項が設けられ、これまでの「教育」と「研究」というミッションに加えて、「社会の発展に寄与」という、いわゆる「社会貢献」が明記されたことと思います。

 本学は開学以来、「実学」を重視してまいりましたが、大学として具体的に「産学連携」に取り組んだのは、平成4年4月の生物資源開発センターの設置、さらに平成9年4月の工学部科学技術共同研究センターの設置に遡ることができると思います。この工学部科学技術共同研究センターは、私が工学部長のときに発案して実現していただきました。平成15年8月には、知的財産基本法の成立を受けて、文部科学省が公募した「知的財産整備事業」に採択されて「知的財産ブリッジセンター」を設置しました。そうして平成17年4月、法人化と同時に、この知的財産ブリッジセンターを取り込んだ「産学官連携機構」を一つの部局として設置しました。この機構を中心に、大学として組織的に取り組んでいることは、改めて申すまでもないと思いますが、特筆すべきは、「共同研究・受託研究」の受け入れや、「特許出願」の件数などが、全国的に見ても、極めて上位にあるということです。全大学の中でも10位台ですが、公立大学の中ではもちろん第1位です。

 次に、3大学の統合・再編、法人化のことに移ります。

 大阪府の行財政状況の悪化を受けて、3大学の統合と教員定数を平成14年度から10年間で25%削減という命題が、学長就任直後に与えられました。これは大変に重い課題でした。私自身で電卓を叩きながら、25%削減計画を立てて、各部局長と、侃侃諤々の議論をしました。多分当時の部局長は、私を恨んでおられるかたもあるだろうと推察します。

 そのころ国立大学だけではなく、公立大学も法人化のことが話題になっていましたので、3大学の統合と法人化とを別々に行うのではなく、一緒にやるという選択をしました。法人化に関しては全国の公立大学の先頭を切る形で取り組みました。立場によって、いろいろのご意見や評価があると思いますが、私は法人化してよかったと思っています。

 3大学の統合は、いまや順調に融合に向かって進んでいると思います。

 そろそろ、今後の課題に移ります。

 第一は、少子化と、高等教育への進学率が50%を超えて、いわゆるユニバーサル化にどう対処するかということです。この少子化とユニバーサル化という2つの問題は本来独立事象ですが、いまや我が国では密接に関連した問題です。まず少子化の状況のなかで、いかに受験生を確保することができるかということです。いまのところ本学は幸いにも厳しい選抜をすることのできる「公立大学」として、受験生を確保できていますが、いつまでこの状態が維持できるか心配です。入試説明会をいろいろの地域で実施するといったような、これまでやってこなかった取組みもぜひ必要と思います。そのためには全教職員の協力が必須です。この点について、ぜひお考えおきいただきたいと思います。

 ユニバーサル化と関連して、教育の質の向上をどうするかということです。学生だけの問題ではなく、先生の側の意識と取組みも変えていただく必要があると考えます。いまここでは学生のことを論じても意味がありませんので、先生の側の問題を話します。授業アンケートを見る限り、授業に満足していない学生が多いことが気がかりです。いろいろの理由があると思いますが、授業アンケートに対して、より一層真摯に対応していただきたいと思います。

 さらに、授業の質を上げるためには、お互いがお互いの授業を見学するいわゆる「ピアレビュー」を学部はもちろん、大学院にまで拡大して、義務化していっていただきたいと願っています。見学される側だけではなく、見学する側にもきっと効果があると思います。先生方が、自分の受けてきた教育方法を変えるという覚悟をお願いします。

 学士課程教育をどうするかということから、少し大学院にまで踏み込みましたが、次の話題として、大学院教育に移ります。

 大学院への進学者の増加、ことに博士後期課程学生の増加が非常に重要と考えています。質の高い研究を遂行して、世界的な競争に勝てないと、大学としての存在を世間にアピールすることはできません。世界に通用する高度研究型大学ということを繰り返し申し上げてきたゆえんです。

 幸いにも、博士後期課程学生に対して、十分とは言えませんが、財政的な支援も実行できる見込みが立ちましたし、文部科学省の科学技術振興調整費の助成も得て、高度人材育成センターを立ち上げることができました。本学における研究と教育の質の飛躍的な向上に繋がることを期待しています。

 研究に関しては、先生方が独自の発想に基づいて行ういわゆる「ボトムアップ型」の研究に加えて、大学として戦略的に取り組む「トップダウン型」の研究の重要性が増すと思います。そのいずれに対しても、教職員が一丸となって力を合わせることによって、世界水準の研究を推進してくださるものと確信しております。

 最後に、つい先日策定しました「公立大学法人大阪府立大学の将来像」に触れます。

 第1期の中期目標・中期計画の4年間が経過しました。第2期の中期計画を策定する時期に来ています。第3期の終了時点である15年後を視野におきつつ、平成19年10月から鋭意取り組んできました。昨年11月26日に公開のシンポジウムを行ったばかりですので、できるだけ繰り返しを避けて、ポイントだけ述べさせていただきます。

 これまで、「世界に通用する高度研究型大学」をキャッチフレーズにしてきました。これを「高度研究型大学―世界に翔く地域の信頼拠点―」と改めました。十分に高いポテンシャルの教育・研究を推進している公立大学であるということを、強くアピールしたいという思いを込めています。その上で、「多様」、「融合」、「国際」という3つのキーワードを大切にすべき視点として選びました。これらを認識しつつ、教育、研究、社会貢献、法人経営の4つの柱について、教職員が一丸となって一層の発展に向けてご尽力いただきますよう、重ねてお願い申し上げます。

 大過も小過も犯しながら、何とかここまで来ることができましたのは、まさに皆さまのご支援、ご協力のお陰です。この場を借りて、改めて厚く御礼申し上げます。私自身の理事長・学長としての務めも、ようやく第4コーナーを回ってホームストレッチに入りました。全うできなかったことがたくさんありますが、ゴールに向けてラストスパートで臨みますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 新しい理事長・学長のもと、教職員一丸となって公立大学法人大阪府立大学の一層の発展を期していただくことを願って、年頭の挨拶とさせていただきます。  ご清聴ありがとうございました。