大学案内

平成20年 年頭の挨拶

2008年1月4日

研究力の一層の向上を願って

理事長・学長 南努 年頭のあいさつ

理事長・学長 南努

 皆さま、明けましておめでとうございます。新しい年を、気持ちも新たに、お迎えになられたことと存じます。

 昨年のこの場では、「教育力の一層の向上を願って」というテーマで話をしました。今日は、大学にとってもうひとつの重要な課題である研究を取り上げ、「研究力の一層の向上を願って」という趣旨でしばらく話しをさせていただきます。

 公立大学法人大阪府立大学として再スタートを切るに当たって、新しい大学のキャッチフレーズは「世界に通用する高度研究型大学」を目指すということを掲げました。教育機関である以上、大学のような高等教育機関であっても、第1のミッションは教育であるということは言を待たないと思います。それが昨年のテーマでした。しかしここでいう教育は、あくまでも教員各位の研究に裏打ちされたものである点が、初等中等教育の教育機関と根本的に異なっています。その意味では、基本に研究があるということができます。

 中央教育審議会から平成17年1月28日に出された「我が国の高等教育の将来像」という答申に、大学のもつ機能として、次に述べるような7つがあると記述されていることをご存知の方が多いと思います。1.世界的研究・教育拠点、2.高度専門職業人養成、3.幅広い職業人養成、4.総合的教養教育、5.特定の専門分野、例えば芸術、体育等の教育研究、6.地域の生涯学習機会の拠点、7.社会貢献機能、例えば地域貢献、産学官連携、国際交流等です。各々の大学は、これらの機能のすべてではなく、一部分のみを保有するのが通例であり、保有するいくつかの機能の間の比重の置き方の違いに基づいて、機能別に分化していくと述べられています。

 本学はこの7つの機能のうち、5番目の芸術や体育等の特定の専門分野という項目を除いて、他の機能はすべて保有しています。この7つの機能を定量的に表現するために、いわゆるレーダーグラフを書いたとします。そうしますと、この5番目の軸以外の残り6つの軸上では、いずれの点も原点から大きく離れたところに位置して、大きな星形のレーダーグラフができます。そのなかでも、1番目の世界的研究・教育拠点、2番目の高度専門職業人養成、7番目の社会貢献機能の軸上の点が原点からできるだけ遠く離れたところにくることを願っています。

 世界的研究・教育拠点となるためには、外部研究資金の獲得が必須であることは改めて申すまでもないと思います。本学教員は世界的研究・教育拠点になりうる十分なポテンシャルをもっていることを、外部研究資金の獲得状況から見てみます。少し数値が並ぶのをお許しください。

 外部研究資金の総額が、法人化前の平成16年度には15億4千万円であったのが、平成17年度には20億2千万円と20億円を超えて、30%増という6年間の中期目標に掲げた数値目標を1年で達成したことは何度も触れました。18年度は27億9千万円に伸びて、50%増となりました。19年度はまだ中間的な値ですが、22億円になっています。

 この外部研究資金全体のなかから、科学研究費だけを取り上げますと、平成16年度は6億7千万円、平成17年度は8億2千万円、平成18年度は8億9千万円でした。そうして平成19年度には10億6千万円と、初めて10億円を超えました。この間の伸び率は、平均して16.6%となります。

 一方、科研費の予算総額は少しずつ増えていますが、その平均伸び率は1.5%ですから、本学が獲得した科研費の伸び率がいかに大きいかお分かりいただけると思います。

 件数も、平成19年度だけに限って申しますが、新規が158件、継続が177件で合計335件です。研究分担者などもいれた総数は370件です。全教員数が756名ですから、ほぼ50%となります。複数件数獲得している方もおられますので、正確さを欠く表現になりますが、2人に1件、採択されたことになります。

 一方で、科学研究費の申請をしていない教員が19年度分においては241名、率にして30.5%、20年度分においては169名、率にして22.4%です。相当減少していますが、なお5人に1人が申請していないということになります。私はこの点に危機感をもっています。冒頭の方でも申し上げましたが、大学教員は各自の研究に裏打ちされた教育をする点に大きな特徴があります。研究を遂行する上では、金額の多寡はさておき、何らかの研究資金を必要とします。その研究遂行のための資金は、「かくかくしかじかの研究をする、そのためにこういう研究資金を必要とする」ということを、自分以外の他人にアピールし、その意義が認められてはじめて付与されるというのが原則であると考えています。従来、日本の大学においては、この原則に従って運営されていませんでした。

 大学が法人化された現在、私はある程度この原則に近づけたいと考えています。そのため来年度からの基盤研究費配分にあたっては、「申請方式」を採用することといたします。何らかの形で、「年間の研究計画」を提出していただきます。科学研究費など、他の機関に研究申請書を提出していれば、そのことを申告するだけでよいような書式を考えています。そういう実績のないかたには、あるフォーマットで申請書を出していただきます。その内容の良否は審査せず、提出していただければ、基盤研究費を配分します。「ある程度この原則に近づけたい」と申し上げたゆえんです。

 申請書の提出がないかたの研究費は、法人がもつのではなく、所属の部局長に預けます。

 基盤研究費について、「申請方式」への切り替えは、大学の運営において、かなり大きな変革と思います。その趣旨に対して、先生方のご理解をお願いいたします。この方式の導入によって、科研費を始めとする外部研究資金の申請が増えることも期待しています。

 研究関連の記事として、「科学新聞」の昨年暮れ12月7日号に、国立大学法人と独立行政法人について、研究論文数、特許出願数、共同研究・受託研究の3つの項目について、上位20位までのランキングが掲載されていました。公立大学や私立大学はそこには記載されていませんでしたが、本学の実績をそこに当てはめてみました。相対的な位置づけを知るためです。
まず発表論文の総数では1,080件で16位、一人当りでは1.38件で10位、特許出願件数の総数では156件で16位、一人当りでは0.19件でこれも16位、共同研究・受託研究の総数では368件でこれもまた16位、一人当りでは0.46件で枠外。共同研究・受託研究の金額は総額、一人あたりの金額とも枠外という結果です。
整理してみますと、16位という順位が多いことに気付きましたが、本学はもっと高いポテンシャルをもっていると私は思っていますので、正直なところ、大変残念です。

 研究力の向上に関係して、もうひとつ重要な事柄をお話しします。

 ドクターコースの学生数の増加に対して、何らかの方策をとることができないか、かなり長い間検討してきました。その第一歩として、授業料相当分を援助して、実質的には授業料を負担しなくてすむような支援制度の構築を進めています。「特別研究奨励事業」という位置付けを考えています。細部の詰めに時間がかかっていますが、来年度から実行できるようにします。実行できたとして、十分な措置でないことも認識はしていますが、この制度によってドクターコースの学生数が増え、大学院研究科の一層の充実に繋がることを願っています。高度研究型大学の実現と表裏一体の課題と考えています。

 文部科学省への各種の助成申請で、新たに採択された状況は、皆さん良くご存知の通りですが、感謝を込めてここで改めてご報告いたします。

 まずひとつ目は、「特色GP」で、総合教育研究機構が提案された「大学初年次数学教育の再構築」が採択されました。人間社会学部でいま走っている「現代GP」の「地域学」、看護学部で走っている「現代GP」の「e-ラーニング」と併せて、GP関係で3件が実施されていることになります。

 2つ目は、「学生支援プログラム」で、学生センターが提案された「WEB学生サービスセンター構想」が採択されました。この提案は、職員が発案され、学生センターで議論のうえで提案書が作成され、採択されたという点で特筆に値すると思います。

 3つ目は、看護学研究科が他大学と共同で提案された「がんプロフェッショナル育成プログラム」が採択されました。

 これらの申請、さらには推進にかかわっておられる教職員の皆さまに厚く御礼申し上げますとともに、今後一層のご尽力をお願いいたします。これらに採択されたことによって、本学の研究・教育環境の整備が進み、さらに研究・教育の充実・発展が大いに期待できます。

 惜しくも採択に至らなかった取組みもたくさんありますが、それらにかかわってくださった教職員の皆さまにも御礼申し上げますとともに、来年度にむけた各種の募集に積極的に応募してくださることを強くお願い申し上げます。

 最後に、法人化第一期のスタートから、3年が経過し、折り返し点に来ておりますが、第2期の中期目標・中期計画の策定に向けて動き出さなくてはならないと考えています。先ほど来お話ししてきました研究力や、教育力、さらには社会貢献力などについて、まず社会的にどのような位置づけにあるかという足元を固めて取り掛かる必要があり、そのためには学内の教職員だけでは十分なデータ収集、解析などを進める上で課題が大きいと判断し、外部のシンクタンクの力を借りて、第2期の中期目標・中期計画の策定準備や、将来ビジョンの策定を進めることにしました。すでに部局長連絡会議、教育研究会議、WEBサイトなどでお知らせしていますが、この場を借りてご報告させていただきます。

 皆さま、どうか良い年を迎えられ、教職員、学生が一丸となって、本学の発展に一層ご尽力いただきますようお願して、年頭に当たっての挨拶とさせていただきます。