大学案内

平成18年 年頭の挨拶

2006年1月4日

3大学統合・法人化一年目の記

理事長・学長 南努 年頭のあいさつ

理事長・学長 南努

 皆さま、明けましておめでとうございます。
大変穏やかな正月三が日でしたが、どのように新年を迎えられましたでしょうか。ことに元旦の日は穏やかでした。石川啄木の、

 何となく
今年は良いことある如し
元日の朝晴れて風なし

 という詩を思い出しておりました。

 さて本日は、年頭にあたって「3大学の統合・法人化一年目」を振り返りつつ、今後のことについて、皆さまと一緒に考えていきたいと思います。

 それぞれの大学のもっている校風や伝統、文化といったものが異なる3つの大学がひとつになるというのは大変な困難を伴うことは申すまでもありません。さらに、法人化というこれまでに無いシステムに移行しました。このような大きな変革を3年余りの準備期間を経て実施し、昨年4月1日を期して、公立大学法人大阪府立大学として再スタートしたところであります。多分教職員のお一人お一人にはいろいろなご意見があると思いますが、幸いにも大きな支障も無く、順調に船出をしたと考えております。

 これまでにわが国の高等教育制度は、3度非常に大きな変革を経験しています。

 第1回は、明治維新における高等教育制度の導入期。第2回目は戦後の新たな教育制度の発足。第3回目が今まさに行われている大学改革です。第1回目と第2回目がいずれも強い外圧によったものであることは申すまでもありません。これに対して第3回目のものは、平成3年の大学設置基準の大幅な改定に端を発しており、内発的なものと理解されていました。この大学設置基準の大幅改定において、「大綱化」というキーワードが提示され、教養教育の在り方が大きく変わり、大学院重点化という方向が打ち出されました。次に「法人化」という問題が、行財政改革の一環として出てきました。ここでもはや内発的ではなく、外圧に変わったと考えられます。

 その点でなおこの法人化という問題に対して、気持ちの上で違和感を覚えておられる方が多いのも事実であると思います。

 一方で大学を取り巻く状況も、少子化に伴う「大学全入時代」という極めて厳しい状況にあります。さらに、国はもとより、地方公共団体の財政状況が逼迫していることも確かであり、このような環境の中で、単に生き残るだけではなく、発展していくためには、自ら変わっていかなければならないと思います。

 3大学の統合・法人化という変化のときを、発展のチャンスと捉えるべきだと私は考えています。そのチャンスを生かすことができるか否かは、構成員である教職員の皆さまの力を結集できるか否かにかかっています。小異を捨てて大同につくという気持ちを共有してくださることを切にお願いいたします。ベクトルが一致しないと外に向かっては大きな力になりません。

 磁石を例にしてたとえ話をします。理系の先生方が多いので、単純すぎる例で恐縮ですがお許しください。物をくっつけることのできる磁石になるものとならないものがあるのはご存知の通りですが、そもそも磁性が生じるのは、スピンが対を成していない、いわゆる不対電子の存在によります。たとえ不対電子がたくさんあっても、そのような電子がてんでばらばらの方向を向いていますと、磁石にはなりません。不対電子がある一定の方向に揃ったベクトルをもったとき、自発磁化が生じて、磁石となります。

 本学は実に現在816名の教員と273名の職員がいます。合計1,089名の教職員の意識が、公立大学法人大阪府立大学の「発展」という方向にベクトルを揃えることができれば、非常に大きな自発磁化が発生することは間違いありません。

 私に課せられた最大の責務は、構成員一人ひとりの気持ちを、本学の「発展」という方向に、できる限りベクトルを揃えることができるように努力を傾注することではないかと考えています。

 少し視点を変えて、昨年4月以降、文部科学省への公募で採択された状況をご報告します。

 まず大学院教育イニシアティブについては、看護学研究科から申請した「EBCP(Evidence Based Clinical Practice) 志向の博士前期・後期課程のリンケージ」が採択されました。

 現代GPについては、看護学部からの「看護実践能力の獲得を支援するeラーニング」と人間社会学部からの「地域学による地域活性化と高度人材養成」が採択されたことは改めて申すまでも無く、ご存知のことと思います。

 この種の文部科学省の施策に対して応募し、採択されることは、大学にとって大変大きな意義を有していることは、21世紀COEの採択、知的財産整備事業における「知財ブリッジセンター」の採択ですでに実証済みのことです。21世紀COEは世界的研究・教育拠点とはいってもどちらかというと、研究に大きな比重がかかっているのに対して、大学院イニシアティブとかGPは教育に比重がかかっています。今後文部科学省は教育に比重の高い施策を中心に提案してくると予測されます。

 大学院イニシアティブの今年度の取組みが始まっていますが、採択されていなければ実施不可能であったような大学院生に対する国際的な教育プログラムが行われつつあります。各専攻、各研究科、各部局におかれましては、大学院イニシアティブ、現代GP、特色GP等、文部科学省の公募に対して、来年度に向けて積極的に応募してくださるよう、この場を借りて、改めてお願いいたします。

 次に、外部資金の獲得にかんしてお礼を込めてご報告申し上げます。

 中期目標において、法人化前に比して30%増やすと謳われています。単純に6年で割り算しますと、1年ごとに5%ずつ増やしていくことになります。昨年11月30日現在のまとめによりますと、共同研究費は前年比117%、受託研究費は前年比127%、科学研究費は122%で、全体として120%となり、目標を大きく上回っています。

 ことに科研費は初めて8億円を超えて約8億2千万円になっています。件数の伸びよりも、1件当たりの金額が大きくなったことによっています。今後ともこのような競争的資金の獲得に努めてくださるようお願いいたします。第3期科学技術基本計画では、25兆円という数値目標が掲げられます。第1期が17兆円、第2期が24兆円でしたから、これからの5年間も、競争的資金は増加すると期待されます。

 最後に教育改革の問題に触れます。

 新大学のキャッチフレーズは、「世界に通用する高度研究型大学を目指す」と謳っていることはご存知の通りですが、このキャッチフレーズが研究だけやればよいということを言っているのではないことをご認識いただきたいと思います。大学の負っているミッションが研究と教育であり、人材の育成ということが最大の責務であります。このことを考えますと、世界に通用する研究を通じて、「世界に通用する人材を育成する」ということが、アプリオリに含まれているキャッチフレーズであるとご理解いただきたいと思います。

 こういうことを改めて申しておりますのは、法人化に伴って、研究に対する改革の取組みに比べて、教育に対する改革の取組みがやや疎かになっているのではないかという危惧を感じているからです。

 どうか、3大学の統合・法人化を契機として、公立大学法人大阪府立大学の今後の「発展」に向かってベクトルを揃えてくださいますことを切に願って新年のご挨拶とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。