公立大学法人大阪府立大学

平成31年 年頭の挨拶

更新日:2019年1月7日

理事長・学長 辻洋

皆さん、新年あけましておめでとうございます。年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか。私には三人の息子がおりますが、それぞれが予定をもっており、年末には誰も帰省しませんでした。そのため、夫婦水入らずで白浜で温泉につかるとともにアドベンチャーワールドでジャイアントパンダを見てきました。50歳以上限定の特別チケットを思い切って購入し、バックヤード見学もできましたので、パンダの愛くるしい笑顔と仕草で日ごろの疲れを癒すことができました。その一方で従来の動物園から進化し、生き残りをかけた顧客サービスを実践している場であるとも感じました。

さて、2018年の漢字は「災」で本学も大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号で立て続けに大きな被害を受けました。被災された皆さまには改めてお見舞い申し上げます。一方で大阪には明るい話題もありました。2025年の万博開催が決まったことです。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。

1970年に大阪万博が開催された頃、私は高校2年生でした。当時は、地下鉄網もまだ整備されておらず路面電車やトロリーバスが残っていて、スマホもなく、電話番号を100件分ぐらい暗記していた時代でした。そのときの記憶力が今もあればとよく思います。中学校から英語を勉強していましたが、1ドルが360円の固定為替制度で「海外に行くのは夢のまた夢」、英語で会話をしたことはなく、万博に来た欧米人は皆同じ顔に見えていました。

また、この大阪万博前後は高度経済成長時代で、どんどん生活が豊かになるとともに魚類や昆虫が都会から消え人体にも影響を及ぼす環境汚染が大きな社会問題になっていました。私が1978年に製造業に就職したころ、寮や社宅は、社員確保のためだけでなく投資のために整備していた時代でした。社員の研修も充実していて、大学で勉強しなかった分を会社で教えてもらえるというありがたい時代でした。さらに、私は48歳で退職して大阪府立大学に着任しましたが、どの会社でも終身雇用、年功序列を前提に人事制度が作られ、一方で男女の雇用条件が大きく異なっていた時代でした。

昭和の終わりから平成の間、大学の進学率も年々高くなり、車を所有する人も増え、一家にあるテレビやエアコンの数なども増えたのはご存知の通りです。まさに成長時代でした。大学で教えることも学ぶことも「成長」を前提としていた学問だったかもしれません。

先の大阪万博から平成の時代までの社会が「成長・開発・消費時代」とすると、次の万博さらにその後に向けては、間違いなく「成熟・持続・循環時代」です。元東京大学総長の小宮山宏先生からは、車もエアコンも日本国内には行きわたっている飽和時代という話を聞いたこともあります。平成が終わりを告げようとしている今、誰もが時代の変化を理解する一方で様々なトレードオフが起こっており、意識改革が求められる時代のように思います。

年頭挨拶会場の様子

大学に求められる意識改革として、これまでもお願いをしてきましたが、改めて三点話をします。

一つ目は、今話した「成長・開発・消費」時代の教育から「成熟、持続、循環」時代の教育にシフトすること、そしてそのスピードをあげていただきたいということです。「今まで行ってきた伝統ある教育を維持すべきだ、変えることはとても難しい」と言わずに、教職協働で議論して人生100年時代ともいわれる今後の社会を先読みし、アドベンチャーワールドが顧客層をセグメンテーションしてサービスを充実しているように、社会人教育や履修プログラム制度を拡大できないか真剣に取り組んでいただきたいと思います。

二つ目はキャンパスのグローバル化です。今後さらに多くの大阪府立大学生がごく自然に海外に出て、また多くの交換留学生を受け入れる時代になっていきます。先の大阪万博のときとは状況が全く異なっています。国際交流や留学生を担当する部署だけがグローバル化関係の仕事をする「出島」時代ではありません。グローバル化は国際交流の経験が豊富な教職員個人だけが担うのではなく、全教職員で組織的に取り組まなければならないテーマです。

いま留学生は全学生の4%前後ですが、これが近い将来10%程度以上にならないと学生の量も質も持続できないと考えています。すでに多くの研究型国立大学はそのような比率になっています。そのような時代に対応するため組織として何をすべきか、個人として何をすべきかをぜひ議論してください。欧米人が皆同じ顔に見えるということがないようにお願いします。

三つ目は国全体の大学に対する政策のことです。先の大阪万博のころからしばらくは、運営費交付金も豊富、深夜や休日の実験も当たり前、大学もどんどん新設されて教員のポストも増えていきました。大学は教育・研究に集中すればよく、産学連携など社会貢献については明示的にも求められていませんでした。改めて指摘するまでもなく、いま状況は全く異なってきています。

文部科学省の視点からは教育の質保証・多様な入試を求められ、幅広い教養教育・グローバル教育が求められています。国家試験を所管する厚生労働省の視点からは実習の充実、専門教育への特化が求められています。さらに同じ厚生労働省からは健康面から労働時間に厳しい管理を求められる一方で大阪府からは予算を厳しく管理され、人員を増加することはとても難しい状況です。

これまで「会議時間を短縮しよう」「コピー枚数を減らそう」「寄付を集めよう」などの声をかけたりしてきましたが、私の在任期間にはなかなか成果が出ず、働き方などの見直しは不十分でした。責任を感じるとともに力不足で申し訳なく思っています。一人一人の労働時間を減らして雇用を増やすというワーキングシェアリングへの方向は合意されるでしょうか。今後の議論を期待したいと思います。

最後になりますが、年末には学内ポータルでメッセージを出しましたように、私の理事長・学長の任期は今年の3月末日までです。2期4年間微力ながら全力をつくしてきました。皆さまのご支援に心から感謝しています。

今年4月から新学長が就任すれば新法人の定款により任期4年となりますので、仮に大学統合のスケジュールに変更があってもその方に学長としてのリーダシップを継続して発揮していただけます。法人統合・大学統合に向けては困難な調整事項が多数あります。新法人設立準備室の方々には多大な労をとっていただいています。学内で不協和音を起こしている状況ではありません。教職員全員が一致団結して、次の学長を支えていただくことを切にお願いします。

本年が皆さまにとって良い年になることを祈念して、私の新年の挨拶とさせていただきます。

理事長・学長 辻󠄀 洋