大阪府立大学

日本語・日本語教育研究所

設置目的

  1. 「学習者の母語を考慮しない日本語教育文法」と「特定の言語を母語とする学習者のための日本語教育文法」のそれぞれのあるべき姿および相関関係について研究する。
  2. 日本語教育のための異文化間コミュニケーションのあるべき姿について研究する。
  3. 日本国内の大学における留学生教育の実態を調査し、多様な課題とそれに取り組む各大学の動きを常時情報収集することで、大阪府立大学の国際化戦略に資するアカデミックな拠点となる。

研究内容の概要

(1)日本語教育文法の研究

戦後の日本語教育は、1962年に「外国人のための日本語教育学会」という名称で組織が発足してから、すでに50年あまり経過し、成熟期に入ったと考えられている。それだけに、長い間使われてきた日本語文法の体系に関して、反省の機運が高くなってきている。

研究者が研究に研究を重ねて記述できた日本語の文法が体系的に日本語教育の世界に導入されているが、その現代日本語の共通語である東京語の文法をそのまま日本語教育に使うのではないというのが一つの立場からの反省である。文法項目のすべてではなく、日本人のコミュニケーションの世界で本当に必要なものを教えるべきではないか、文法項目の意味・機能のすべてを教えようと思っても結局うまく行かないので、100%を目指さない説明を工夫すべきではないかといったのがその主な反省点である。

上述の反省は、日本語の文法項目自体をいかに整理すべきかというレベルのものであるが、これに対して、学習者の視点からの声が今一つの反省点を作り上げている。この学習者の視点にも、実は2種類のものが含まれ、人間は生まれつき頭に普遍性を持つ言語習得装置を備えているというチョムスキーの学説を全面的に信用しなくても、心理学研究によって明らかにされつつあるように、人間の学習活動には、一定の規則があるので、それを日本語教育に生かすべきではないというのが一つ目で、2つ目は、第二言語を習得する際に母語の知識が何からの形で転移されるので、その場合のプラスの転移を生かし、マイナスの転移を克服するようにすべきではないかという主張になる。

日本語の文法項目自体をいかに整理すべきかという立場からの研究を行える研究者は、国内にそれなりにいる。「本当に必要なもの」は、コンピューター技術が発達している今、項目の一つ一つを丁寧に調査すればよい。また、100%を目指さない説明の工夫も従来の日本語学の世界で積み重ねられた研究の技術を生かせば、期待する研究の結果を手に入れることができないわけではない。

一方、人間の学習活動に見られる普遍的な規則の発見は、容易なものではなく、英語を目標言語とする学習活動が世界的な規模で行われている今、その英語に関する第二言語習得研究という学界の研究成果を漏れなく導入して、日本語教育文法の構築に生かしていなければならないし、殊に学習者の母語の転移は、文法項目を一つ一つつぶさに観察していかなければ捉えることができない。この2つの角度からの研究は、国内では、大変遅れているので、これを研究所の第一の研究テーマとし、もって、「学習者の母語を考慮しない日本語教育文法」と「特定の言語を母語とする学習者のための日本語教育文法」の相関関係を理論的に解明し、その両方の構築に寄与する。

このような研究を行うための基礎的な作業として、目標言語である日本語と学習者のさまざまな母語との対照研究が必要である。このような対照研究を、所長の張麟声が発起人代表を務める「中国語話者のための日本語教育研究会」及び「言語の類型的特徴対照研究会」の活動として行う。

(2)異文化間コミュニケーションの研究

日本語の学習者と日本語の話し手である日本人とは、異なる文化的環境に生まれ育ち、おのずと異なる文化を身に着けているために、そのような学習者が日本人と仕事や生活の場をともにしているときは言うまでもなく、日本語そのものを勉強し始めた時点から、一種の異文化間コミュニケーションが始まっている。そのために、日本語教育研究の重要な項目の一つとして、異文化間コミュニケーションの研究が立てられているが、今までの日本語教育学界では、研究者が基本的に、言語学、英語学、日本語学といった言語系の学問を専攻するものであるゆえ、言語そのものをいかに教えていくかを真剣に考えてきてはいるが、本格的に異文化間コミュニケーションに組織的に取り組む動きはあまり見られない。このような好ましくない現状を打開すべく、本研究所の2番目の研究活動は、この異文化間コミュニケーションの研究に置き、宗教史、言語思想史、比較文学といった角度から、迫っていく。

(3)日本国内各大学における留学生教育の課題と展望に関する研究

大阪府立大学では、ここ20年以来毎年約200人の留学生を受け入れてはいるが、留学生に対する効果的な教育についてアカデミックな視点から研究する拠点が存在しなかった。上記(1)及び(2)で述べた研究テーマと並び、日本国内の各大学における留学生教育の実態について情報収集し、大学の規模や設置形態等々によって異なる留学生教育の多様な課題を明らかにし、大学における留学生教育の展望を示すことで、大阪府立大学における国際化戦略に資する研究成果を生み出したいと考える。

構成員

所長

張 麟声(人間社会システム科学研究科 教授)

研究員

区分 教授 准教授
人間社会システム科学研究科 大形 徹
山東 功
山崎 正純
櫻井 俊郎

客員研究員

機関 役職 氏名
戸川 律子
安田女子大学 文学部日本文学科 准教授 宮岸 哲也

設立年月日

平成26年(2014年)4月1日

お問い合わせ

人間社会システム科学研究科

教授 張 麟声

Tel 072-254-9650(直通) Tel 4486(内線) Eメール chizhang[at]lc.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。